2016年9月26日月曜日

釣道楽の世界展 みどころシリーズ⑤ へし切長谷部や日光一文字を所蔵する当館がこういうことをアピールするのもなんですが、「名竿は刀より得がたい」と書かれている江戸時代の日記を展示しています。

釣道楽の世界展の見どころなどをご紹介するシリーズ。
第5回は「名竿は刀より得難し」と書かれた江戸時代の日記がある、です。

前回の記事では、武士が娯楽としての釣りを楽しむにあたってどのように理論武装(正当化)していたのかというお話をさせていただきました。

今回は、そうした「武士の釣り」というジャンルにおいて、江戸時代に最先端を突っ走っていた庄内藩の事例をご紹介致します。

冒頭の「名竿は刀より得難し」というメッセージについてですが、これを書いた人物は、秋保親友(あきほちかとも、18001871)という庄内藩主酒井家に仕えた軍学者です。武士なのにこんなこと言って大丈夫なのでしょうか。

しかし、そこはご心配なく。庄内藩において釣りは武道と同じような扱いをされており、むしろ奨励されていました。早朝の暗い中、道具を担いで長距離を歩き、磯で獲物がかかるのを忍耐強く待つ行為は、心身の鍛練にも良く、武用の助けになると考えられていました。そのため、庄内藩士は、自分たちで竿を作るほどに釣りにのめり込み、良い竹を探して藪にわけいりました。この「名竿は刀より得難し」という言葉も、酒田から鶴岡への道中で20本余りの竹を得た際に発せられた言葉で、庄内藩士の釣りに対する思いを象徴的に示しています。

ちなみにこの前後は下記のような記述になっています。
扨々(さてさて)いつもいふ事なから、名竿は刀より得難し、子孫是を麁末(そまつ)ニ取扱ふへからす、誠執心ニして得難きものといふへし」(鶴岡市郷土資料館蔵「野合日記」より)
いつも言っていたのですね。

庄内藩士は国元にいる時だけでなく、参勤交代で江戸に行った際も、時間があれば郊外に竹を求めて出かけていっています。19世紀の江戸勤番武士の日記には深大寺(東京都調布市)、滝野川(東京都北区)、池袋(東京都豊島区)まで竹を切りに出かけていった記事が出てきます(岩淵令治「庄内藩江戸勤番武士の行動と表象」(『国立歴史民俗博物館研究報告』第155集、20103月))

実は今回、この秋保親友が自作した釣り竿や庄内地方で使われた道具類も多数展示しています。「第Ⅱ章 釣りに宿る気風」の「2 釣りの土地柄」に展示していますので、どうぞお見逃しなく。
本日9月26日(月)は休館日ですので、また、明日以降、皆さまのご来館をお待ちしております。


学芸課 宮野



2016年9月24日土曜日

Can you find all of them? Find fishermen in traditional Japanese Ukiyo-e pictures!

Our exhibition, THE ANGLING CULTURE IN JAPAN : History, Diversity, and Philosophy of Fishing is offering a new and interesting way to enjoy traditional Ukiyo-e pictures. The method was also mentioned in this blog written by curator Miyano.

Do you know the picture book, “Where’s Waldo?” It’s a very fun book; your mission is to find a very small image of Waldo on every page. Waldo is usually standing amongst a crowd of people and that makes it really hard. You can expect to have the same kind of fun while viewing some traditional Ukiyo-e pictures! There are no Waldos to be found in Ukiyoe-pictures of course. Instead, there are many fishermen. Finding them in the pictures is really difficult! Unlike “Where’s Waldo?”, those Ukiyo-e drawings are antiques. Some of the fishermen are almost fading in color! Still, it isn’t mission impossible. If you look very closely at every picture, you can recognize the lively figures of fishermen, sometimes at the river bank, or on the boats, etc… (Please come and see ukiyo-e to find them!)

This new method of viewing ukiyo-e will give you something more than just finding “Waldo-fishermen”. It offers time travel to the Japanese olden days! By staring at the ukiyo-e pictures in an attempt to find fishermen, you’ll notice some other interesting things. I’ll show you some examples.
On the famous Rakuchu-rakugaizu screen, you’ll find this Edo style fisherman image. He made an appearance in our poster as a mascot of the exhibition! 


Please take a closer look at the picture. That will give you a feeling of a time trip! You’ll see what I mean.
Yeah! Just found a samurai, practicing archery! His neighbor must be a sword smith!
 
Look! There is a barber on your right! Is that a thief standing in front of the monk?
(I’m only guessing!)
There are some more interesting images in pictures. Viewing each of them while imaging the stories is fun!

Rakuchu rakugaizu depict the scenery of Kyoto, and there are many of them. The one Fukuoka City Museum has is one of the 5 Rakuchu rakugaizu that are designated as cultural properties. Now is your chance to see this valuable artifact! The open period will close October 16th. Please don’t miss this rare opportunity!


Curator Kawaguchi, who is in charge of the fishing exhibition, its column, and its crayfish event is waiting for you! (Look how busy she is, grappling so many tasks on her own! In addition, she's grappling this gigantic lure as well! ) The lure she is holding is exhibited on the 2nd floor! You'll be able to take pictures with it.

Please visit the following website to check out curator Kawaguchi’s blog.
http://tsuri-douraku.jp/column.php

Posted by Takamura

2016年9月23日金曜日

全部見つけられる・・?魚(うぉ)ーリーをさがせ! in 浮世絵

公式ブログにこんなダジャレタイトルをつけて怒られないか心配ですが、釣道楽の世界ではきわめて斬新な浮世絵の楽しみ方を提案しています。
以前こちらのブログでも宮野学芸員が紹介しています。

浮世絵の中に隠れている、ウォー〇ーならぬ、魚(うぉ)ーリー(釣り人)をさがせ!
これが全然見つかりません!なにせ、年季の入った古美術。魚(うぉ)ーリーたちの中には儚くなりかけている面々もちらほら・・それでもほら!よくよく見るとあの船べりに、あの水際に。楽しげな釣り人達の姿がみえませんか?(会場でお確かめください!)


実際に見ていただくと分かるのですが、描かれた釣り人を全員見つけるのにはかなりの集中力と視力が必要です。でもこれは絶対チャレンジしてみる価値あり!というのも、この鑑賞方法。ゲーム感覚が楽しい!・・というのももちろんなのですが、釣り人を追って隅々まで鑑賞することで、他にも様々な発見があるのが魅力的なのです。たとえば、洛中洛外図屏風。当展覧会ポスターにも登場するこの釣り人でおなじみですね。


それをよーく見ていると、その時代にタイムスリップしたような楽しい気持ちになれるのです。ちょっと試してみましょうか。
 

刀工と、弓を練習中の武士・・ですかね?
 
 右は散髪屋さんかな?左は・・え、強盗!?(なのかはわかりませんよ!)
写真:狩野孝信「洛中洛外図屏風」《重要文化財》福岡市博物館蔵(部分)(展示期間:9月17日〜10月16日)

他にも色々なシーンがあり、想像をめぐらしながら見ると楽しいです。

京都の風景を描いた洛中洛外図屏風は数多く存在しています。そんな中でも福岡市博物館の所蔵であり釣道楽の世界でもご鑑賞いただけるこの洛中洛外図屏風。なんと重要文化財指定を受けている全国5点うちの一つなのです。当館自慢の所蔵品を是非多くの人にご覧いただきたいのですが、こちら10月16日(日)までの限定公開・・・どうぞお早めにご観覧ください!

釣り初心者にして、釣展担当、釣道楽コラム担当、イベント担当、ザリガニ担当・・・色々抱えて大奮闘中の河口学芸員も、皆様のお越しをお待ちしています!(ついでに巨大ルアーも抱えちゃってます!)この巨大ルアー、二階展示室前に設置してあります。自由に手に取って写真撮影できますよ♪


河口学芸員コラムはこちらからチェック!
http://tsuri-douraku.jp/column.php


Posted by たかむら

2016年9月22日木曜日

The Angling Culture of Japan: History, Diversity, and Philosophy of Fishing:We can take a look at an interesting part of Japanese culture through this exhibition!

I think “The Angling Culture in Japan: History, Diversity, and Philosophy of Fishing” is a great title for describing the contents of the exhibition in a short and concise sentence.



I like the title, but when I hear “The Angling culture”, I can’t help but ask myself, is the culture relatable? Or, is it ok for me to talk about it when I don’t know much about it? It looks like I’m not the only one. When I asked my friend to come and see the Great Amazon exhibition, she said “Yes!” in excitement. On the other hand, when she heard that the next exhibition will be about the fishing culture, she looked disappointed and told me, “Well, I don’t fish, so…” I understood her reaction, thinking, it’s not a great idea to force someone who doesn’t fish to come to the exhibition. That is, until I saw the exhibition!

From beginning to end, I was totally enthralled by the beautiful culture of fishing. Fascinated by the beautiful pictures of sceneries,
 
I caught my breath when I saw the lively pictures of fish,
 
surprised by the delicate structures of fishing tools and the histories that they have…

When I exited the exhibition, I thought the true title of the exhibition should be, “Enjoy this beautiful Japanese culture to your hearts content: Fishing, a new approach to viewing Japanese culture. ”

This exhibition is for…

People who like fishing
People who like the arts
People who like history
People who like literature
People who like goods and accessories

If you are one of the above mentioned, I strongly recommend seeing the exhibition.

I think this article is getting too long, so I want to wrap it up here. I am an amateur at fishing, who got lost in the fishing world. I’ll show you how great it is in this series of articles!

Don't be hesitate to enter the world of Angling Culture! Bring your inner fisherman out!
You will be happy then, I'm sure of it :)

 
Posted by
Takamura
 

釣り経験がない方にこそおすすめ!驚きの釣道楽の世界へようこそ。乗り出そう、日本文化の大海原へ!

釣道楽の世界。みなさんはこのタイトルを聞いたときどう思いますか?展覧会の内容を端的に表す素晴らしいタイトルです。しかし、なぜでしょうか?私のように釣りをしない人間が聞くと、ちょっと身構えてしまいます。


果たしてその世界は理解可能なのか?私が足を踏み入れていい世界なのか?

こう感じるのは、きっと私だけではないでしょう。その証拠に、大アマゾン展に誘った時は、「行きたい!」と目を輝かせていた友人たちが、次は釣道楽の世界!と聞いた瞬間「釣りはしないからな・・」と眉をひそめるのです。私も、釣りに興味がない人は楽しめないかもしれない、無理に誘ってはいけないなと思っていました・・・。公開された展覧会をみるまでは・・・!この展覧会のテーマは、エレガント&スタイリッシュ!といってもイメージが湧きにくいかもしれませんね?しかし、この展覧会を見え終えたとき、あなたはその意味をかみしめることになります。(少なくとも私はそうでした。)

入場から出口まで、釣り文化の美しさに終始うっとり・・
洛中洛外図屏風の美しさに心奪われ、

魚譜・魚拓の躍動感に息を飲み、

釣道具の繊細さやその歴史に驚き、
会場を後にする際には伝統的な竹竿を携えて釣りに繰り出したい!という思いさえ湧いてきました。

見終わってみて、私の心の中に浮かんだ副題は次の通りです。「日本文化の美しさを心行くまで味わう展覧会。斬新なその切り口はなんと釣り!」 お分かりいただけると幸いです。

釣道楽の世界を是非見ていただきたい方はこんな方!
釣り好き(言わずもがな)
美術好き
哲学好き
歴史好き
文学好き
小物好き
とにかく、美しいものをこよなく愛す方々! 
上のどれか一つでも当てはまる方は是非見ていただきたいと思います。

長くなりそうなので、一回目はこの辺で。抽象的な表現ばかりになって申し訳ないです。初心者がうっかり迷い込んだ釣道楽の世界。これからその魅力をどんどん紹介していきますね♪

人はきっと皆、生まれながらにして"釣り人"。怖がらずにその世界の扉を開けてみましょう。あなたもこんなとびきりの笑顔に出会えるはず。


Posted by たかむら

2016年9月21日水曜日

釣道楽の世界展 みどころシリーズ④ 「江雪」と釣り


釣道楽の世界展の見どころなどをご紹介するシリーズ。
第4回は「「江雪」と釣り」です。

昨今、「江雪」といえば、「左文字」を連想する方も多いとは思いますが、今回、釣道楽展でご紹介しているのは、唐の詩人で政治家の柳宗元(773819)が詠んだ漢詩「江雪」です。本文は以下の通り。

 江雪
千山鳥飛絶
万径人蹤滅
孤舟蓑笠翁
独釣寒江雪

おおまかな意味としては、「たくさん飛んでいた鳥がいなくなり、行き交う人々の姿も消え、小舟に乗った蓑笠をかぶった老人が、雪の降る川でたった一人釣りをしている」というところでしょうか。冬のさみしい情景が目に浮かびます。

この「江雪」は絵の題材として、古来、大変好まれたようで、老人が冬の川に浮かべた小舟から釣り糸を垂れる姿が数多く描かれました。「寒江独釣図」といったタイトルの絵を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

釣道楽の世界展では、この「江雪」が武士に与えた思想的影響について、「象徴としての釣り」というコーナーを設けて解説しています。「第Ⅱ章 釣りに宿る気風」の冒頭になります。

展示しているのは以下の3点。
・八景図/狩野探幽筆/延宝元(1673)年/1幅/福岡市博物館蔵
・漁翁図/斎藤等順筆/江戸時代初期(17世紀)/1幅/岩国徴古館蔵
・太公望図/河鍋暁斎筆/江戸時代後期~明治時代初期(19世紀)/1幅/板橋区立美術館蔵


 
写真:左=漁翁図(岩国徴古館蔵) 右=太公望図(板橋区立美術館蔵)

さてさて、武士たちは釣りを楽しむにあたってどんな理屈を考え出したのでしょうか?ぜひ会場でお確かめください。

ちなみに、こちらは今回展示していませんが、薩摩の戦国大名・島津家の家臣である上井覚兼(15451589)の随筆「伊勢守心得書」(東京大学史料編纂所蔵、『大日本古記録 上井覚兼日記』下巻に収録)には、この「江雪」にまつわる興味深いエピソードが書かれています。

「漁猟之事、是又年少之比者慰かてらに、蓑笠の翁ならね共、寒江之雪ニ釣を垂、五湖ならぬ遠嶋に独心を楽しミ候事とてハ、魚を得て筌を忘したるまてにて候」(『上井覚兼日記』下巻206頁)

「蓑笠の翁ならね共、寒江之雪ニ釣を垂、五湖ならぬ遠嶋に独心を楽しミ候」とはまさに「江雪」をふまえた記述です。釣り=「江雪」という連想が一般的な知識として、当時の武士層に浸透していたことがうかがえます。末尾にある「筌(うえ)」とは魚を捕まえる筒状の道具のことでしょうか。単に魚を捕まえるための道具である「筌」(の使い方?)を忘れ、釣りにこそ楽しみを見出していることがここから分かります。

一体どんな釣りをしたのでしょうかね。


学芸課 宮野



2016年9月17日土曜日

「釣道楽の世界―多彩なる水の趣味文化」展、本日無事開幕しました!

昨日私が「準備中です!」と、少し不安感をあおるようなブログを書いてしまったので、今の時間に準備中って・・間に合うのかな・・?と一緒に心配していただいた方もいらっしゃったようです(申し訳ありません!)朝には趣溢れる釣道楽の世界が完成していました!準備はOKです!これから11月6日(日)までの会期中に、是非奥深い釣道楽の世界をご堪能ください!

午前中は初日を記念するような快晴!早朝からお越しくださったご列席の皆様、誠にありがとうございました。

いよいよ開幕します。テープカットの瞬間です!
 
開会式に引き続き行われた内覧会では、担当学芸員による展示解説が行われました。
 
歴代の釣り人が大切に扱ってきた釣り具はどれもとても美しく、どこか迫力さえ感じさせます。「名竿は名刀よりも得難し」という名言があります。言葉で聞くだけではなかなかイメージしにくいかもしれません。しかし、しなやかに伸びる一本竿を実際に見ると、なるほどな・・という気になります。釣りをしない私でも本当に美しいと思える展示品の数々。是非多くの方にご覧いただきたいと思います。一堂に会するのはこれが最初で最後?どうぞお見逃しなく!


本展覧会の仕掛け人であり、生粋の釣り人、松村学芸員もお待ちしております! (注:展示はされておりません)

Posted by たかむら