2017年9月19日火曜日

学芸課長のつぶやき5「ひらがなが読めない・・・!」

鴻臚館の展示物紹介を担当者に引き継ぐ予定でしたが、諸般の都合で引き続き私が書く羽目になりました・・・ので、特別展以外の「博物館諸事情」はしばしお待ちを。

さて、鴻臚館展の目玉のひとつが、源氏物語に関する作品です。
源氏物語の作者は、言うまでもなく、紫式部。

高校時代、古典の授業で、
「いずれのおんときにか、にょうご、こうい、あまたさぶらひたまひけるなかに・・・」
と覚えさせられ、40年たった今でも暗唱できます(エッヘン)。

その、源氏物語が来ています。
紫式部が書いた原本は、残念ながら現代まで残っていません。
それを書き写した多くの写本が現代まで伝わっているのですが、
もっとも古い写本は、鎌倉時代の藤原定家(この人も授業で出てきた)が写したものですが、全巻のうち、ごく一部しか残っていません。

今回展示している「大島本 源氏物語」ほぼ全巻がそろっている(1帖だけ欠落)ものとしては、もっとも古いもので、重要文化財に指定されています。

さて、この「大島本 源氏物語」を読むと・・・


  
 重要文化財 大島本源氏物語 公益財団法人古代学協会蔵(京都文化博物館)

ん~?
ひらがなで書いているのに、全く読めない!なんということ!

「私は、考古学の専攻だ」と言い訳をしていると、
昨年入った学芸員のS(女性)はスラスラと読んでいるではないか!!
学芸課長の権威ガタ落ち(T_T)

源氏物語は、紫式部が書いた後、絵画でも多く描かれています。
今回は、それらの絵画のうち、安土桃山時代の絵師「土佐光吉」が描いた、重要文化財「源氏物語色紙帖」のほか、室町時代の「源氏物語扇面張屏風」、江戸時代に描かれた「源氏物語図屏風」などを展示します。
あでやかな王朝文化を表現した優美な絵画で、きれいですよ。



 重要文化財 源氏物語絵色守帖(乙帖) 京都国立博物館蔵

源氏物語がひらがなで表現しているのに対し、国宝「唐人送別詩幷尺牘」は、
平安時代に鴻臚館で詠んだ漢詩を綴ったもので、もちろん漢字のみです。
「昨日鴻臚北舘門楼樓遊行一絶」
ん!きれいな活字体で、読める。
意味も何とか理解可能。
1000年前の文字が、きれいに残っているだけで、すごい。

この漢詩を読んでいくと、「鴻臚舘」と書くべきところを、「鴻」の字の左が糸偏で書かれ、「臚」の字の辺が、最初は糸偏で書き、その上から馬偏で書き直している!(どっちも間違いだけどね)。




 国宝 唐人送別詩幷尺牘 園城寺蔵(奈良国立博物館)

昔の人でも、漢字を間違うんだね!

間違った箇所を、展覧会場で探してみましょう。

9月15日の金曜日、先ほど出てきた、佐藤学芸員(名前を書いちゃいました)のギャラリー・トーク(古代史資料を中心に)をやりました。


佐藤学芸員は10月4日に再登場します。
鴻臚館展では、毎週水・金曜日に、異なったテーマでギャラリー・トークを行っており、9月20日は仏教美術、9月22日は考古学、9月27日は絵画を中心にトークを行います。
何度でも楽しめる鴻臚館展です。

posted by.米倉

0 件のコメント:

コメントを投稿