2017年10月8日日曜日

学芸員レポート2!神聖ローマ帝国皇帝ルドルフ2世の驚異の世界展


前回ご紹介したルドルフ2世の肖像画。「ウェルトゥムヌスとしてのルドルフ2世像」と言います。

ウェルトゥムヌス(Vertumnus)とは、花や果実、季節の変化を司るローマ神話の神のこと。つまり、この肖像画は、ルドルフ2世が神もしくは神に近い存在であることを視覚的に表現したものだと言えます。

では、ウェルトゥムヌスは、この絵のように花や果物、野菜を寄せ集めた姿をしていたのかというと、どうも違うようです。神話では、果実の女神ポーモーナに恋をしたウェルトゥムヌスは、次々に姿を変えて求愛し、最後に美少年となって想いを遂げたとされ、ルネサンス期の絵画などでは老婆の姿で描かれているのです。

このように描かれた謎の鍵は、どうも、描いた画家が握っているようです。

画家の名は、ジュゼッペ・アルチンボルド(1526-1593)。イタリア・ミラノ出身で、36歳の時にハプスブルグ家の宮廷画家となり、フェルディナンド1世、マクシミリアン2世、ルドルフ2世の3人の皇帝に仕えた人物です。

 アルチンボルドは、宮廷で皇帝の「普通の」肖像画だけでなく、皇帝が収集した動植物の写生図も描いていますが、植物や動物を組み合わせて形作った特異な肖像画を数多く描いたことで広く知られています。その代表作が「ウェルトゥムヌスとしてのルドルフ2世像」なのです。

一見、奇怪で怪物のようにも見えますが、アルチンボルドは、桃やブドウにサクランボ、キャベツにカボチャなど季節にとらわれることなく、のべ67種類もの植物を描き込むことで、四季を司るウェルトゥムヌスを表現するとともに、この世のありとあらゆるものを統べる皇帝の権威や威厳を、この絵を通して暗に示したのです。

Posted by 髙山(担当学芸員)

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